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日経新聞埼玉版 2010年7月7日付

夜の地球や月・火星の天体儀

 渡辺教具製作所(埼玉県草加市、渡辺美和子社長)は地球儀の国内生産でシェアが約5割というトップメーカー。日本人宇宙飛行士が活躍するなか、人工衛星がとらえた夜の地球を再現したり、色弱の人でも読めるユニバーサルデザインを採用したり。輸入品に高い品質で対抗する一方、斬新な商品ですそ野を広げている。
 宇宙から見ると、経済活動が盛んな都市は光に彩られているが、ほとんどの地域は青い闇に包まれているという。同社の「夜の地球儀」は人工衛星が約1ヶ月間撮影した画像を基に製作した。色弱の人は赤い色を見分けるのが難しいため、赤色の使用を極力抑えたのが「地球儀銀波」。市場は小さいが、潜在需要を掘り起こした。
 ほかにも、ペリーやマゼランの航路を記した卓上地球儀や、月探査衛星「かぐや」が撮影したデータを一部活用した「月球儀」、凹凸を精密なイラストで再現した「火星儀」など…。球体の直径は12〜32センチメートル、約30種類をそろえ、年間2万〜3万個を生産する。
 東海大学と契約し、最新の衛星画像データを随時、入手しているのが、高い品質の裏付けだ。工場では手作業と機械生産を並行。大きなサイズは4人の社員が樹脂の球体に紙の地図を張り付ける。機械では地図を印刷した厚紙に圧力と熱を加えて半球状にし、2つ合わせて球体に仕上げる。

斬新で精密、大人需要開拓

 同社は1937年創業。渡辺社長は会社経営に携わるまでは主婦だった。95年に3代目社長だった夫が急逝。後を継いだ時には経営は火の車状態で、3人の息子を育てながら奔走した。それまでは学校の理科教材向けが主力だったことから「すそ野を広げなければ」と思い、百貨店や量販店などにトップセールスをし、新しい販路を開拓した。
 リストラも断行し、2年で赤字経営から脱却した。斬新な商品を出し始めたのもこのころからだ。背景には「少子化の時代、大人が見て楽しんでもらえる商品を出さなければ生き残れない」(渡辺社長)という危機感がある。98年から機械生産を始め、量産できる体制も整えた。
 ここ1年は月球儀の特需に沸いた。2008年の文部科学省の学習指導要領の改訂で、小学校6年生の理科に月の表面を学ぶ内容が盛り込まれたためだ。理科教材向けの補助金が大幅に増額され注文が殺到、フル生産が続いた。10年8月期の売上高は前年比20%増の2億円を見込む。
 工場が手狭になり、今年4月には同じ草加市内に本社を移転した。併設していたミニ博物館やプラネタリウムも新社屋に新装オープンし、毎週火曜日に入場料100円で公開している。
 今年は百貨店の中元商品に同社の星座早見盤が選ばれた。今後は「地道にラインアップを広げ、首都圏以外の地域の販路開拓も進めたい」と意欲を見せる。