「埼玉新聞」に紹介されました

想像力刺激する展示

埼玉新聞 地域総合版 2010年5月18日付

 草加市稲荷3丁目と言えば、越谷市から草加、八潮市へ下る東京葛西用水に近い住宅街。その一角に「草加市では唯一の埼玉県博物館連盟に加入している」という「ミニ博物館・地球&宇宙」がある。ほんとに小さな博物館だが、研究員の土屋香さんの話を聞けば、子どもも大人も、目を輝かすに違いない。(岸鉄夫)

 想像力を刺激する展示だ。秩父・大滝の鉱山で採れた「純金」もある。秩父に鉱山があったことは、知らない人が多いだろう。
 地球儀のメーカーとして知られる渡辺教具製作所の本社の2階の一角にある。4月末、同社社長でもある渡辺美和子館長から記者クラブにお便りがあった。
 「本社移転に伴い、ミニ博物館が移転いたします。名誉館長として豊遥秋(ぶんの・みちあき)先生をお迎えいたしました。開館は毎週火曜日です。この日は金沢大学大学院卒で化石研究者の土屋香さんがお待ちしております。以前、火曜日に副館長としていらしていただいた國澤正和先生は4月1日から草加市の教育長になられました」
 お便りには豊先生について「地球科学者で、日本を代表する鉱物学者でもあります。博物館の所蔵する鉱物コレクションはいっそう充実したものとなります」とある。
 先週火曜日、午後4時の閉館も間近いころ、渡辺教具本社の玄関右脇の細い外階段を上った。迎えてくれたのが研究員の土屋さんだった。「4月29日にオープンしたばかり。展示品の整理中なんですよ」。早速、鉱石の展示棚をのぞく。
 「これはかんらん石。珪素(けいそ)と酸素でできていて、ガラスの原料になる。色が野菜のキャベツに似てるでしょ。ここでも地中深く掘れば必ず出てきます。硫酸塩鉱物は、数千年前に海が乾燥して海水が蒸発した場所にあります」
 土屋さんの説明は宇宙的な時空を感じさせる。目まいがしてきたが、佐渡鉱山の「金銀鉱石」、秩父・大滝の秩父鉱山の「自然金」を棚の中に見つけて目が覚めた。
 地球の年表で一番古いのは46億年前の先カンブリア時代。生命誕生のころだが、そのころの藍藻(あいも)の化石ストロマトライトも展示されている。大変貴重だという。
 土屋さんの専門は古生物学。これを学びたくて故郷の茨城県筑西市から金沢大学へ。富山県氷見市の恐竜時代前後の地層で研究に取り組んだ。最近の主たるホームグラウンドは北海道の大夕張地域。
 「恐竜の全盛時代の白亜紀の地層があり、面白い化石が出る。アンモナイトがたくさん採れます。だから、夕張は古生物学の宝庫。これを町おこしに活用できないか、と化石学者たちは話しています。夕張は山も、川も美しいところです」